特急キト号

うり坊

2012年12月29日 22:23



「特急キト号」
ルードウィッヒ・ベーメルマンス(さく)
ふしみみさを(やく)
PHP


太陽が一年中さんさんとふりそそぐ国エクアドルの
ちいさな男の子ペドロのお話。

ペドロは「ダダダダ!」としか言えないくらいのちいさな男の子。
一日中庭にいて、干したとうもろこしをにわとりにつつかれない
ように見張っています。
そして、大好きな赤い機関車キト号の通るのを楽しみにしています。

お父さんはつぼやお皿を作り
お母さんはそれをロバにつんで、市場にむかいます。
年のはなれたお姉さんのカルメラはペドロをおぶって
頭にオレンジをのせて、お母さんのあとに続きます。

ペドロも庭でにわとりから干したとうもろこしを守るという
役割を赤ちゃんなのに果たしていて、家族それぞれが
役割を持っている所が豊かで充足した日常を感じさせてくれます。

作者のベーメルマンスは「マドレーヌ」シリーズで有名な作家です。
「マドレーヌ」シリーズはパリの街が舞台となっておしゃれでカラフルな絵ですが、
このお話は茶色のコンテで力強く描かれています。
あとがきによると、旅行好きのベーメルマンスが特急キト号に乗り
エクアドルを旅しました。市場に並ぶ目を見張るばかりのめずらしい
果物、ひとなつっこく親切なインディオたち・・・すっかり
エクアドルが好きになった、彼はこの絵本を作ったのだそうです。

マドレーヌシリーズもユーモアがあって好きですが
この「特急キト号」ではエクアドルの人びとの生活や
暖かさが伝わってきてなんとも言えず大好きになりました。

ペドロとキト号の車掌さんとの出会いと別れが
この物語の主軸ですが ラストシーンなどは
上等なフランス映画を観たような感動につつまれます。

あまり目立たない本かもしれませんが、見つけたら手に取って
読んでみてくださいね!

では 良いお年を!!


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